自分の存在価値が分からなくなって抑うつになった方60代 女性 福津市
来院までの経緯
2カ月前から、急に身体と心に不快な症状が現れるようになりました。毎朝、吐き気がひどく、食べる気力がなくなり、体重が大幅に減りました。
1日に数回、強い不安感に襲われ、動悸が激しくなり、手が震えて止まらない状態でした。肩から胸にかけてぞわぞわした感じがして、足の力が入らなくなることもありました。ネガティブなことや自己否定的な考えにとらわれ、気持ちが沈んでいきました。
毎日、「あれもしなければならない、これもしなければならない」と焦りはあるものの、体が重くてなかなか行動に移せず、常にイライラしていました。
最初は単なる疲れだと思っていたようですが、病院を受診しても大きな異常は見つからず、「少しでも楽になりたい」と思い、当院にご来院くださいました。
初回来院時のお悩み
① 不安感が日常的に強く、どうしても解消できないことに苦しんでいました。
② ネガティブな思考が頭から離れず、何とか振り払いたいという思いが強くありました。
③ 朝の吐き気や倦怠感がひどく、身体が重く感じられることで、日々の生活に支障をきたしていました。
初回来院時の心身の評価
① 「本当の自分が分からない」といった内容を繰り返し話されていました。自分の存在に対する確信を持てず、自己喪失感(アイデンティティの危機)で苦しんでいるご様子でした。
② 「仕事をしていない」「子供がいない」「自分には何もない」と、欠落感に焦点を当てて話されていました。自己価値感の低下が強くうかがえました。
③ 自己否定感が強く、常に何かに焦っている様子がありました。その焦りが無意識に心身へ負担をかけている印象がありました。
④ 東洋医学的には「陰虚タイプ」の傾向がみられ、過度のストレスや疲労によって身体の潤いが不足しやすい状態でした。このような状態は心身の不調につながる要因の一つになり得ます。
⑤ 感情面では、抑え込まれていた「怒り」が強く出やすい状態がみられ、それが自己否定感や焦りと結びついている可能性がありました。
鍼灸施術の経過
施術目的
施術の目的は、「本当の自分がわからない」「自分の価値を見失っている」といった自己喪失感(アイデンティティの危機)を和らげていくことでした。こうした状態では、生きる意味や自分の価値が揺らぎ、日々の生活や将来に対する不安が強くなることがあります。
そのため、自己受容を高め、「今の自分でいい」と実感できる感覚を育てていくことを目指しました。自分を受け入れ、現状の自分にも価値があると感じられるようになることで、内面的な安定感が育ち、心身の不調も落ち着きやすくなります。
さらに、「残りの人生をどのように生きていくか」を少しずつ整理し、焦りや不安感を和らげながら、方向性を見つけていくことも重視しました。
施術内容
① 自律神経のバランスを整える鍼灸施術
心身の緊張を和らげ、落ち着きを取り戻しやすくすることを目的に鍼灸施術を行いました。
② アイデンティティの再構築と自己受容感を高めるカウンセリング
「自分の価値を見失っている」という感覚に対して、捉え方を整理し、現在の自分を受容的に捉えられるようサポートしました。
③ 感情の波を整えるセルフケア
焦りや自己否定感が強くなったときに、落ち着きを取り戻すためのセルフケアをお伝えしました。
1~4回目(週1回の来院)
施術を始めてから、徐々に変化が見られました。朝の吐き気が少し和らぎ、食欲も戻ってきました。
夜間の睡眠も少しずつ深くなり、以前より休養感が得られるようになってきました。
一方で、不安感やイライラ感はまだ残り、情緒が不安定な状態が続いていたため、心のケアも引き続き重視しました。焦らず少しずつ自己肯定感を育て、感情の波に対処できる力を整えていくことを大切にしました。
5~8回(週1回の来院)
施術を続ける中で、頭が軽くなり、ネガティブな考えが以前より少なくなってきました。
朝から動きやすい日が増え、身体面のエネルギーが回復してきている感覚も出てきました。
また、新しいことに挑戦したいという前向きな気持ちが強くなってきました。ただ、「本当にできるだろうか」と不安が出る場面もありましたが、回復の過程として自然な反応であるため、少しずつ自信につなげていけるようサポートを続けました。
9~10回(月2回の来院)
自律神経症状は全体として落ち着き、不安な気持ちが湧いたときも、プールで身体を動かすことで和らぎやすくなってきました。心身のバランスが整ってきたご様子でした。
また、以前は「自分には何もない」と感じていたところが、今では「そんな自分でいい」と思える場面が増え、落ち込みが続くことが減ってきました。
自己受容が進み、自分を大切にする感覚が育ったことで、心の安定につながっている様子がうかがえました。
現在
メンテナンスのため、月に1回のペースで来院。
英語の教師や通訳をしていた経験を活かし、翻訳の仕事につなげるために通信講座で勉強中です。
※経過には個人差があります。

