大人の発達障害(ADHD・自律神経失調症)30代 女性 福岡市
来院までの経緯
ADHDの特性があり、幼少期から感情の波が大きく、気持ちの切り替えが難しい時期がありました。その影響もあり、周囲とうまく関係を築けず、いじめを受けた経験がありました。
会社に勤めてからも、仕事が思うように進まない場面で感情が高ぶり、強い言葉が出てしまうなど、対人トラブルにつながることがありました。
ADHDの特性に対するコンプレックスが強く、無理をして頑張り続けていましたが、忙しさが増すとパニックのような状態に陥り、希死念慮が強まることもありました。
過去に自殺未遂の経験もあり、精神的に追い詰められるような日々を過ごしていました。
心療内科では「うつ病」と「パニック障害」の診断を受けていました。
医師からは障害者手帳の取得を勧められましたが、「普通になりたい」という強い思いがあり、当時は取得に踏み切れませんでした。
「つらい身体の不調を改善したい」「心に余裕を持って日々を過ごしたい」という思いから、当院にご相談くださいました。
初回来院時のお悩み
① つらい身体の不調を改善したい
長期間にわたり、頭痛、めまい、しびれ、不眠などの身体的な不調が続いていました。
② 感情を安定させたい
ADHDの特性の影響もあり、感情の波が大きく、気持ちの切り替えが難しい状態が続いていました。突発的に怒りがこみ上げたり、落ち込みが強まったりすることがあり、心に余裕を取り戻したいと感じておられました。
③ 仕事のトラブルに関する悪夢が続く
仕事のプレッシャーやストレスが重なり、悪夢の影響で眠りが浅く、朝起きても疲れが残る状態でした。仕事にも支障が出ていたため、睡眠の質を整えたいという思いが強くなっていました。
初回来院時の心身の評価
① 語気が強く、焦りがうかがえました
会話の中で語気が強くなる場面があり、話し方も急ぎがちで、心に余裕がないご様子でした。
② 東洋医学では「陰虚タイプ」の傾向がみられ、ストレスや過労で全身のうるおいが不足しやすい状態でした
過度なストレスや過労の影響で、体をうるおす力が低下し、心身の緊張が抜けにくい状態がうかがえました。
鍼灸施術の経過
施術目的
①「生きづらさ」を減らし、自己受容感を育てる
ADHDなどの発達特性がある方は、場面によっては社会のルールや周囲の期待に合わせることに負担を感じ、「生きづらさ」を抱えやすいことがあります。
特に日本社会では、身だしなみや生活リズム、家事・育児などにおいて「きちんとしていること」や「気が利くこと」が求められやすく、それがプレッシャーになる場合もあります。
また、思考や行動の偏り、感情の揺れやすさなどが重なることで、長年にわたり劣等感や周囲との摩擦に悩み、強いストレスを抱えることもあります。
その結果、「自分の努力不足」「自分が悪い」と自分を責め続け、抑うつや自律神経の不調につながることもあります。
発達特性そのものを無理に変えようとするのではなく、苦手さを抱えたままでも「生きやすくなる工夫」を重ね、自己肯定感を育てていくことを目指しました。
②感情との付き合い方を整える
ADHDの特性として、感情の高ぶりが急に強くなり、意図せず強い言葉が出てしまうなど、対人関係に影響が出ることがあります。
特にこの方は過去に自殺未遂の経験もあり、まずは安全性を最優先にしながら、感情が揺れたときの気づき方や落ち着きを取り戻す方法を身につけていくことに重点を置きました。あわせて、鍼灸施術では心身の緊張を和らげ、自律神経のバランスを整えるサポートを行いました。
施術内容
① 「自律神経のバランスを整える」鍼灸施術を行いました。
不眠、しびれ、頭痛、めまい、月経に伴う不調など、全身の症状が和らぐことを目標に施術を行いました。
② 「生きやすい捉え方」を育てるためのカウンセリングを行いました。
自分らしく過ごせる考え方や向き合い方を一緒に整理しました。あわせて、ADHDの特性による困りごと(感覚過敏、仕事上のミスなど)への対処方法もお伝えしました。
③ 「感情の波を整える」セルフケアをお伝えしました。
この方の思考の傾向や、過去に非常につらかった時期の状況を踏まえ、日常の中で実践できるセルフケアをお伝えしました。
1~8回目(週2回の来院)
頭痛や生理痛が軽減し、身体面では良い変化が見られてきました。その後、数日間パニック発作が続く時期もありましたが、ご本人からは「全体としては調子が良くなってきている」とのお話がありました。
一方で、仕事の負担が重なったことで心身の状態が急激に悪化し、医療的な対応が必要な状況となりました。
医師からは「適応障害」と診断され、休職の提案もありましたが、ご本人は当時は受け入れることが難しい状態でした。
当院では、心身の緊張を和らげ、落ち着きを取り戻すことを重視した鍼灸施術を行いました。
※安全確保を最優先に、必要に応じて医療機関と連携しながら進めました
9~15回(週1回の来院)
1年以上続いていた食欲不振が和らぎ、現在では空腹を感じられるようになりました。1日3食、規則正しく食事がとれる日が増えています。
全身のしびれ、耳鳴り、めまい、生理に伴う不調など、身体的なつらさも大きく軽減してきました。
また、以前はどれほど体調が悪くても上司に伝えず無理をして働いていましたが、現在ではADHDの特性や心身の状態を会社に共有し、必要な配慮を受けられるようになりました。
16~20回(週1回の来院)
夢で目が覚める日が減り、薬を飲まなくても眠れる日が増えてきました。
また、自律神経症状による身体的な不調も全体として軽減してきています。心身のバランスが整いやすくなり、精神面でも落ち着きが出てきたご様子でした。
以前は仕事でトラブルがあると情緒が揺れ、体調も悪化しやすい状態でしたが、現在は「頭の切り替え」を意識できる場面が増え、大きく崩れることが減ってきています。
ストレスがかかったときも、感情に飲み込まれずに落ち着きを取り戻す方法が身についてきたご様子でした。
「無理をしなくてもいい。疲れたときは休んでもいい」と考えられるようになりました。
自分を大切にする感覚が育ち、無理をせず自然体で過ごせる日が増えたことで、心身の状態にも良い影響が出ていると感じられています。
現在
メンテナンスとして、月1〜2回のペースでご来院されています。
「普通にならなくてもいい。自分が楽しいと思って生きていきたい」とお話しされ、以前から興味があった職業へ転職されました。
※経過には個人差があります。

