原因不明の胸部痛30代 男性 遠賀郡
来院までの経緯
転職をきっかけに、半年前からめまいが続き、最近では右胸に息ができないほどの強い痛みが出るようになりました。
ひどいときには、うずくまって動けないほどの激痛が半日以上続き、週に1〜2回は痛みのために会社を休まざるを得ない状態でした。
「また仕事に行けなくなるかもしれない」という不安が強くなると、痛みはさらに悪化しました。
大学病院でMRIやCTなどの検査を受けましたが、特に異常は見つかりませんでした。
「原因が分からずとても不安。これ以上職場に迷惑をかけたくない」という思いから、当院のホームページをご覧になり、来院されました。
初回来院時のお悩み
・痛みをなんとかしてほしい
・2時間おきに目が覚める
・不安なく仕事をしたい
・職場に迷惑をかけたくない
初回来院時の心身の評価
・痛みに対して不安や恐怖が強くなるほど、痛みが悪化しました
・考え方のクセとして、「全て自分が悪い」「きちんとできない自分が悪い」と必要以上に自分を責める傾向がみられました
・東洋医学的には「陰虚タイプ」で、ストレスで全身の潤いが不足している体質
・自分に対する「怒り」の感情が強く表れていました
鍼灸施術の経過
施術目的
「痛みは、身体だけの問題ではなく、ストレスや感情、考え方などの影響を受けて強まることがあります。
特に、医療機関で検査を受けても大きな異常が見つからない痛みや、長引く慢性疼痛では、心身の両面からのアプローチが有効な場合があります。
■ 何でも自分のせいにしてしまう
仕事の遅れに対して「自分が悪い」と感じたり、同僚のミスでさえ「自分がもっと頑張っていれば防げた」と思うなど、必要以上に自分を責める思考パターンが見られました。
こうした「何でも自分のせい」と捉える思考は、いわゆる**認知の歪み(考え方のクセ)**と呼ばれ、痛みや不調を悪化させる要因の一つとされています。
さらに、「頼まれた仕事を断ると無能だとバレてしまう」という不安から、どんな依頼も引き受けてしまい、「できません」と言えなくなっていました。
話を聞いていくと、その根底には「自分は根本的に欠陥がある」という深い思い込みがありました。
カウンセリングでは、この認知の歪みと「欠陥がある」という否定的な自己イメージに焦点を当て、少しずつ考え方を修正していきました。
(※上記は一例であり、感じ方や背景には個人差があります)
■ 痛みの3要素
痛みは単なる体の痛みだけでなく、**体の感覚・心の感情・考え方(認知)**が絡み合って強まることがあります。
効果的な施術のために、「感覚」「感情」「認知」の改善に重点を置きました。
考える部分(認知):痛みをどう受け止めるか。例:これはすぐ治る、もしかして病気かも など
感じる部分(感覚):体が実際に痛みを感じる部分。例:鋭い痛み、右腕がズキズキする、10分続いている など
心の部分(感情):痛みを感じたときの心の反応。例:つらい、怖い、イライラする など
施術内容
東洋医学では、気の流れが滞ることで、痛みや不調が生じやすいと考えられています。
今回は、以下の方針で施術を行いました。
① 右胸の痛みが強かったため、胸部周辺の緊張や巡りに着目し、右胸の気の流れを整える鍼灸施術を行いました。
② 不安感が強かったため、心身の緊張をやわらげ、落ち着きを取り戻すことを目的とした鍼灸施術もあわせて行いました。
③ 痛みに対する捉え方や考え方のクセを見直す支援として、カウンセリングも実施しました。
1~5回目(週1回の来院)
痛みのレベルが少し弱くなり、痛みが続く時間も短くなりました。
毎日鎮痛剤を飲んでいましたが、週2日に減りました。
4時間は連続で眠れるようになりました。
痛みがあっても、不安やイライラが減ってきました。
6~11回(週1回の来院)
1か月間、仕事を休まず出勤することができました。
鎮痛剤を使わなくても痛みの程度がさらに軽くなり、うずくまるような激痛が少なくなってきました。
以前は、少しでも痛みを感じると「どうしよう!」と強い不安に襲われていましたが、セルフケアを通じて不安や痛みを自分でコントロールできるようになりました。
また、「できないと言ってもいい、本音を言ってもいい」という気持ちが芽生え、以前のようにひとりで抱え込むのではなく、同僚に頼れるようになりました。
自信を持って仕事に取り組めるようになり、自ら考案したアイデアが実際に商品化されたそうです。
上司から「こうしたほうがいい」と意見をもらっても、以前のように「否定されている」と感じることはなく、素直にアドバイスとして受け止められるようになりました。
12~16回(2週間に1回の来院)
胸の痛みはすっかりなくなりました。
家族内で心配ごとがあっても、以前のように胸の痛みが出ることはありませんでした。
仕事も順調で、新たに考案した商品が売上トップ3に入るなど、成果が出るようになりました。
うまくいかないことがあっても、「しかたない」と前向きに受け止められるようになり、以前のように自分を責めたり否定したりすることもなくなりました。
最後に

痛みには、身体的な原因だけでなく、心の状態が深く関わっている場合があります。
精神的に不安定な状態にあると、痛みをより強く感じやすくなることが知られています。また、痛みがあるにもかかわらず、病院の検査で異常が見つからないと、不安やストレスがさらに高まり、それによって痛みが悪化することも少なくありません。
実際にこの方は、朝に少し痛みを感じた際、「このまま仕事に行けなくなったらどうしよう」と不安が膨らみ、その結果、動けないほどの激しい痛みに襲われてしまいました。
このように、痛みの施術だけでなく、心の健康にも目を向けることがとても大切です。
もし原因がはっきりしない痛みに長く悩んでいるのであれば、身体だけでなく心のケアにも取り組んでみることをおすすめします。

